誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

グラデーション

昔からグラデーションを見分けるのが苦手だった。
どっちの色が濃いのかと言われた時にそもそも「濃い」とは何なのかについてがわからなかった。
中学2年の時に色覚異常ですねと診断された。
その時は何も思わなかった。

高校生の時、自衛隊に憧れていた。
私の身の回りには自衛官が多くて災害救助や海外の大使館での経験などを聞くうちに自分の将来の夢の一つに自衛官がは言っていたのは確かである。
色覚異常自衛官になれなかった。自衛隊は伝達手段に複雑な手旗信号を用いる。色覚異常には手旗信号の色は判別できないという理由だった。
気がついたら一つの夢を諦めていた。

昔から美術を見るのが好きだった。美術の背景を調べてそれを踏まえて考察するのが好きだった。
本当は文学部なら慶應の文学部で美学と美術を学びたかった。高校三年生の時にそれを親に伝えるとやめなさいと言われた。
色盲が美術は美術を語るのはみっともないよ、と。
大学一年生の時はそれに反発したかった。色盲だって美術は語れることを主張したかった。
いつその反抗をやめたのだろうか。いつのまにかもがくのを諦めていた。
気がついたらまた夢を諦めていた。

私にとって色覚異常とは未来に対する障壁であった。しっかりと目が見える人が羨ましかった。
健常者の見る絵とはどんなものだろうか。


もしも私の目が正常になったとして色盲の時に見えた光景がそこにあったのなら、私は泣いてしまうかもしれない。