誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

あの子は貴族

私の家はマナーに厳しい家だったと思う。

 

箸の持ち方はもちろん、フレンチの食べ方や和菓子の食べ方、抹茶の飲み方などを小さい頃は色んなものに触れて生きてきた。

 

そういったものに母親が敏感だったのだ。

また母親は私に彼女が出来たことを聞くと聞くことは3つあった。

 

生まれはどこか

家族の職業は何か

家族構成はどうなっているか

 

そして最後にこう言い含めて大抵電話は終わるのであった。

 

「あんたを婿にやるつもりは無いからね」

 

 

 

 

先日、『あの子は貴族』という映画を見た。

 

そこに出てくる榛原華子という女性に私はどうしようもない連帯感と途方もない劣等感を抱いた。

 

彼女は東京の名家の箱入り娘で、お見合いをする。しかしお見合い相手の人間の「育ち」をみて引いてしまうのであった。

 

私も経験がある。「育ち」は階層社会の表面であって、それをみて相手がどの階層かを見定める。それを見て対応も変わる。それは決して見下している訳では無い。そういうものなのだ。

 

榛原華子は友達にこう言われる。

 

「華子はさぁ、東京の人と結婚すると思うよ。地方から頑張ってきた人とは合わないと思う。」

 

そしてこう付け加える。

 

「東京ってさ、違う階層の人とは出会わないように作られてるんだよ。」

 

最初、私は榛原華子サイドの人間だと思っていた。家の育ちというものを重視する家庭に育ち、それをステータスとして生きる社会に住む同胞として榛原華子に若干の連帯感を、抱いていた。

 

 

しかしながら、所詮は私は東京の「外部」の人間であって、田舎で育ちをどうこう言っても所詮は田舎者であったのだ。

 

私の家族がやってきたことは「貴族ごっこ」だった。

 

それを心から理解してしまった瞬間にどうしようもない吐き気が込み上げ途中退室をした。