誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

雪の日の思い出

先日、東京では雪が降ったそうだ。

 

私の部屋のカーテンは一昨年の入寮日に閉めて以来開いてないので雪が降った現場を見ておらずあくまで伝聞になってしまうのだが。

 

雪は好きではない。雪の上を歩いた際に長靴に流れ込んでくる雪がなんとも居心地が悪い。靴下に雪独特のドロっとした液体、さながらコーヒーのようなものがまとわりついてくる。お陰様で歩き終わったあとの靴下はぐっしょりと濡れており、身につけているのも気持ちが悪く脱ぎ捨てるのにも一苦労という散々な有様であった。

 

しかし雪の日の思い出というといつも思い出すものがある。

 

うちの家の近くに3mくらいの貯水庫があった。

雪が降った時、私の地域が1m半は平均して降るのだが、私と友達はよく貯水庫によじ登りそこから飛び降りるという遊びをよくしていた。

 

本来ならできない遊び、3mの高さから足から飛び降りるのではなく全身で地面と接触しようかとする飛び降り方は今思えばゾッとするが、雪と言うセーフティーネットがあるのが、その雪に飛び込むのが気持ちの良いものであった。

 

それは死ぬかもしれないという恐怖感と絶対に死なないであろうという自信の狭間において面白さが見出されていた。

 

ひょっとして私は好きなのかもしれない。死ねない死ぬ遊びが。何ならのリスクがあったりタブーがあった際にそれを乗り越えるということに快感を覚える私は社会的には破綻しているのかもしれない。

 

そんなことを思いながら雪が完全に溶けた今日、ようやく外に出た。もう雪の不快感はなく、雪が降ったときの明らかにいつもと違う皮膚感覚でわかる寒さでもない。

 

啓蟄にはまだ早いか。そんなことを思いながら歩く。