誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

雨、そして後日談

雨の日は散歩をする。

出来れば傘をささない方がいい。

傘をささずに雨の日を散歩するのは私の1つの癖であった。

 

雨は親切だ。普段は気にもしないだろう窪みが水溜まりとなって立ちはだかる。いつもなら感じない風を雨を斜めにする事で教えてくれる。

 

 

道端に新聞紙が落ちていた。水でぐっしょり濡れたその新聞紙のインクは滲み、重く泥のようにも見えた。もう昨日の情報を教えてくれる便利な紙は雨に濡れたせいで泥以下の存在になっていた。

 

雨というのはお節介だ。もう必要のないものということをありありと私に見せてくる。もう死んだということを。死体に鞭打ってまでも、教えてくる。

 

 

雨なんて降ったのは数週間前の事だ。そしてこのブログは雨が降った1月29日に途中まで書いてたりする。このブログの中身を再開しようとしたきっかけはとても簡単だ。

 

 

数週間ぶりにその通りを通ると新聞紙は乾き、紙のまま地面と同化する事で自分の存在を誇示していた。その時の私の感情をどう表現すべきか分からない。醜いとも思った。でもそれと同時に尊さも感じた。

 

やがてその紙は同化しきれずついには散り散りになるのだろう。

 

それでも私はしっかり確認した。

 

一枚の紙、人間の創造した変哲のない無機物の生命に対する真摯さを。

 

故に雨が降った日と今では考えが少し異なる。

必要がなくても生きるのだ。目的を終えても戦うのだ。

 

生きることが必要となり、戦うことが目的になるのだから。