誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

あの子は貴族

私の家はマナーに厳しい家だったと思う。 箸の持ち方はもちろん、フレンチの食べ方や和菓子の食べ方、抹茶の飲み方などを小さい頃は色んなものに触れて生きてきた。 そういったものに母親が敏感だったのだ。 また母親は私に彼女が出来たことを聞くと聞くこと…

音楽性の乏しい雲に

初めて買ったアルバムはBUMP OF CHICKENの『COSMONAUT』だった。 そりゃもう狂ったように聞いた。私の中学はとにかく娯楽がなかった。ヘッドホンから流れる音が私の青春の全てで、その音をループしながら月日は経った。 それから少しずつCDが増えていった。…

残念ながら今回の選考に関しましては

「きっと何者にもなれないお前達に告げる」 7月の暑さに目を背けながら家で1人ゲームをしていると幻聴のような言葉が聞こえてきた。この言葉を聞くのは、二回目。 一回目は2018年、夏。 ちょうど受験生だった夏。受験勉強を絶対指定校推薦でいけるからとタカ…

東京の幽霊は靴下に宿る

東京は、コインランドリーが多い。 最近は洗濯物が多くなり、仕方なくコインランドリーのお世話になることがあるのだがコインランドリーというのは沢山あり、2番目に近いコインランドリーが乾燥能力が高いため常用している。 乾燥機の前には30分くらい座るの…

スタバのあの子が眠っている間に考えていること

四谷のスターバックスコーヒーにいる。 特に用事は無い。2時間ほど時間を潰さなければならなくてフラフラと歩いていたらあったスタバに入り、残り一席となったところに滑り込んだところだ。 こういう時1人というのは便利だ。大学一年の時は授業終わりに1人で…

エンドロール

人生で何度のエンドロールと出会ったか分からない昔は映画のエンドロール中に退室するタイプの人間だった。 単純に訳もわからない文字列と音楽を聴き続ける時間が苦痛だったから。 椅子に深く腰掛けてエンドロールを見つめるようになったのは2013年7月29日。…

生き残りたい

最近、死ぬのが怖い。 いや申し訳ない。今の私は少々お酒が入っている。その上で聞いて欲しい。最近、死ぬのが怖い。 死んだ時自分の生きた全ての意識が無くなるのが怖い。死んだ時自我が消えうせるのが怖い。 希死念慮を持つ人は強いと思う。こんな弱さを持…

「先生、悪いニュースが2つあります」

成人の集いの前日だからだろうか。 高校時代の恩師のことを思い出していた。 その先生はお世辞にも先生に向いているとは言えない。冷徹でどちらかと言うと予備校講師の方が向いているという人間であった。 しかし先生の現代文の授業はとても面白く先生の授業…

3月のライオン

昨日、『3月のライオン』をみた。これは将棋漫画の方では無く、1992年に公開された恋愛映画の方である。まずこのポスターの顔の表情が好きだ。消えていくんじゃないかという淡い表情と半分まで食べたアイス。この表情の理由は映画を見ていくとわかることにな…

惑星ソラリス

人生で初めて3時間弱の映画を見た。 私は所謂映画を““分かっている””側の人間では無いので、これを見てアンドレイ・タルコフスキーは流石だ、これは間違いなくSF界の巨匠の作品だとは言えない。むしろ冗長だ。これを詩的というのならば削れる所が多すぎると…

5時から7時までのクレオ

本来なら秋学期に授業で見る映画であったが私自身の怠惰のせいで欠席し、見れなかったので今更ながらに見た。感想を書こうと思う。(ネタバレも含まれているのでもしも見る可能性のある方はご注意を) 『5時から7時までのクレオ』の簡単なあらすじは癌かもしれ…

倫に生きる

出産予定日は3月3日だったらしい。 しかし予定というものは大抵崩れるものでその2日前、奇しくも109年前に芥川龍之介がおぎゃあと言った日に私も同じことをすることになる。おぎゃあ。 同じ誕生日であると言うだけで意識するというのはこの日本を代表する作…

ポンペイ

引越しをする時に色々と買わなきゃいけないものというのが多くて煩わしい。 必要最低限の生活を心がけてきた2年間は物質社会の適合を無意識に避けようとしていてその結果、何を買おうかということすら思い浮かばない。困ったことだ。 一つ、置時計を買おうと…

雨、そして後日談

雨の日は散歩をする。 出来れば傘をささない方がいい。 傘をささずに雨の日を散歩するのは私の1つの癖であった。 雨は親切だ。普段は気にもしないだろう窪みが水溜まりとなって立ちはだかる。いつもなら感じない風を雨を斜めにする事で教えてくれる。 道端に…

雪の日の思い出

先日、東京では雪が降ったそうだ。 私の部屋のカーテンは一昨年の入寮日に閉めて以来開いてないので雪が降った現場を見ておらずあくまで伝聞になってしまうのだが。 雪は好きではない。雪の上を歩いた際に長靴に流れ込んでくる雪がなんとも居心地が悪い。靴…

鶴巻町の恋

最近、引越しのために物件を探している。 本来なら9月くらいに終わらせなければならないものをどうやら今やっているらしいのだが、やり方が気に食わない。 自分の希望を押していくと、その条件の物件がズラリと並ぶのだ。 この効率的なやり方がまるで婚活に…

煙で前が見えなくなった

ゴダールの映画「気狂いピエロ」においてサミュエル・フラーは本人役で「映画とは何か」という問いに対してこう返す。 「映画とは、戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するに、エモーションだ。」 私はこの言葉が好きだ。それ…

脳みそを食わずには生きていけない

「パリは脳みそのフライを食べて生きているのです」 一度聞くと思わずギョッとする言葉である。 こういったのはフランスの小説家、バルザックであった。 彼は多作の小説家であったが、もちろん産みの苦しみというものを体験している。どうしても文が生まれな…

僕の人生は幸せに向かって歩いている

これは誰かに対してのメッセージ 独白でもなくメッセージなので一人称は僕でもいいだろう。 人生で辛かったのはいつだろう。実はもう一人兄がいて僕が産まれる前に死んでいたと知った時だろうか、母親が新興宗教にハマって経典を体を巻きつけて祈っているの…

どこまでも青い自分とどこまでも赤いあいつ

人生の転換期は高校二年だったと思う。 自分の意思で東京へ行き、学生団体を作り、初めての彼女が出来た。 この字面だけ見てもやはり高校二年生の時の密度は濃い。しかしその中でも1番の比率はやはり学生団体だった気がする。 学生団体を作った時の友人とは…

成人式

今日は成人式らしい。 まだ私は19歳なのに成人になる覚悟を決めろと言われるらしい。 それはあまりにも酷だなと思った。 成人になる事は目出度いことでも何でもない。もう庇護下にはいれないということだ。責任を持つということだ。死に一歩近づいたというこ…

缶コーヒー

こんな寒い日には午後の紅茶が飲みたくなる。 高校二年生の冬、決まって休み時間は友達と自販機へ駆け出していた。 教室から遠くに設置されている自販機へ駆け出していくのは飲みながら残り僅かな時間、2人で何かを語りたかったからであった。 彼はいつも決…

スタンプカード

昨日の夜、LINEが来た。 と言ってもよく分からないお店の公式LINEだった。 既読を何となくつけてみると、新年営業を開始しましたという旨のLINEであった。そのLINEをしてきたお店の名前を見た時、まるで紅茶に浸したマドレーヌを一欠片口に含んだ時のように…

天使

いつからか普遍的なものに憧れを持ち始めた。 いかなる時でも絶対的に自分を崩さないという自己完結性を見て自分との差に打ち震えた。 だからこそ普遍的な存在になりたかった。 将来の夢はなんですかとよく聞かれる。親によく将来の展望を聞かれる。 将来は…

グラデーション

昔からグラデーションを見分けるのが苦手だった。 どっちの色が濃いのかと言われた時にそもそも「濃い」とは何なのかについてがわからなかった。 中学2年の時に色覚異常ですねと診断された。 その時は何も思わなかった。高校生の時、自衛隊に憧れていた。 私…

世界の半分

秋学期に「青くて痛くて脆い」という映画を見た。正直そんなに期待はしていなかった。 映画館に入る口実が欲しくてその口実にそれなりの名前のものを選んだに過ぎなかった。 見終わった後、主演の吉沢亮の気持ち悪さに感動を覚えていた。 人生の勝ち組にしか…

49日

祖母が初めて倒れたのは確か高校2年生の頃だったと思う。 寮にいた私に母親は電話で大丈夫だけど覚悟をしておきなさいと言った。 長期休暇に入院している祖母に初めて訪ねたのは12月のことだった。 病院であった祖母は少女のようであった。どこまでも無邪気…

老衰

恥ずかしい話だが、春学期に小説を書こうとした。した、ということは完成することはなかったのだが。 タイトルは「老衰」 屈折した男の話を予定していた。 恋愛観の屈折した男の話だ。その男は恋愛に性欲が混ざり込むのがどうしても許せなかった。恋愛は神聖…

年賀状代わりのようなもの

あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。 喪中なので年賀状は出せませんが、こちらの方で皆様に新年の到来をお祝いしたいと思います。私の好きな小説家である池波正太郎は春には来年の年賀状は刷り上がっていたようです。そこから12…

2020年12月31日

一年の計は元旦にありと聞く。なるほど確かにそうかもしれない。1月1日というキリの良さはとても魅力的だ。たかが短針が2回転するだけなのに世界が変わる。新しい自分になる。今までの朝日が特別な朝日であるように感じる。 それでは私も2021年の目標を立て…