誰にでも言える秘密の話

東京 大学生 文学部 20歳 男 短歌、エッセイ、小説、詩

缶コーヒー

こんな寒い日には午後の紅茶が飲みたくなる。

 

 

高校二年生の冬、決まって休み時間は友達と自販機へ駆け出していた。

教室から遠くに設置されている自販機へ駆け出していくのは飲みながら残り僅かな時間、2人で何かを語りたかったからであった。

 

彼はいつも決まって缶コーヒーを買っていた。私はコーヒーが飲めないからと言って午後の紅茶を買って2人で飲んだ。

手がやけどするほどに熱いその缶をお手玉しながらよく未来の希望を語った。

一気飲み競争をしていつも私が勝ったこと、毎回舌を火傷したこと、夕日が海に落ちていくのを見て「冬が終わるな」と言った友達の横顔。

今でも思い出せる。

 

今、彼は東京大学理科一類に落ちて慶應義塾大学経済学部で女を食いまくってるらしい。

私は慶應義塾大学法学部に落ちて早稲田大学文学部で麻雀による金銭のやり取りでしか喜びを見いだせない。

 

 

今日は本当に寒い。こんな寒い日は午後の紅茶を飲みたくなる。

でも缶コーヒーを買って一気飲みした。相変わらずコーヒーは飲めないままだったが飲みたくなる人の気持ちはわかる気がした。